本作品は60年以上前に発表されたSF(サイエンス・フィクション)小説でありながら、今もなお読み続けられている名作です♪
アメリカで、SF・ファンタジー作品に与えられる有名な賞を2つ受賞!
→翌年ヒューゴー賞短編小説部門を受賞
SFといえば、宇宙や未来がテーマというのが定番ですが、【アルジャーノンに花束を】は知能指数を高める手術と、それに付随するストーリーという異色なものでした
「アルジャーノンに花束を」は、どんな内容?(ネタバレ注意!)
強く願うチャーリイは、純粋な心を持つ優しい青年
脳外科医の博士からは、自分が考えた事、思い出した事、身の回りに起きた出来事について文章を書くように言われ・・・
物語は、チャーリイ・ゴードン自身が書く「経過報告」として展開していきます
手術前からの「経過報告」は、「けえかほおこく」から始まる
脳手術は成功🎉→少しずつ知能が上がる⤴️
文章のスタイルは洗練されていき、思考の対象もより抽象的で複雑な内面の描写になっていきます
IQ68から、数か月でIQ185の知能を持つ天才チャーリイ👨になった!
一方で、孤独を深めるチャーリイ・・😢
仕事や学習能力がアップし、その面では楽になるのですが、過去の記憶がフラッシュバックし、彼を苦しめます
母ローズからの言葉
そんなもの捨てておしまい!アルファベットの積木であそびなさい!
チャーリイ、お手洗いへ行きなさい。パンツに漏らしちゃだめ
革のベルトで息子を打ち据え、折檻するローズ
けがらわしい!お前はまともな人間の仲間じゃないんだ
息子を悲しげに見つめる母の姿がよみがえり
過去からあらわれた影が私の足を掴んで引きずり倒そうとする・・・
叫ぼうとして口を開けても声が出ない出典:『アルジャーノンに花束を』本文より
これまで友達だと信じていた仕事仲間からは
ところが今は一転し、賢くなって めざましい成果をあげているチャーリイは、いじめから憎悪の対象になってしまいます💦
学習面は順調👍→第2の我が家となった大学の図書館に通い詰める
止まらない学習意欲!
彼の知能は、猛スピードでその専門分野の研究者をも超えてしまう
詐欺師だ
二人とも。彼らは天才のふりをしていたのだ・・・私が知っている人間はすべて、見かけ倒しだった。
出典:『アルジャーノンに花束を』本文より
天才的な知能とのバランスが取れず、人間関係は悪化⤵️
急成長を果たした頭脳は、人との健全な関係を築けないのでしょうか
教養を高め、知識を殖やし、自分や社会を理解したいと望むのがいけないことなんだろうか・・
チャーリイは苦悩します😢
あれほど望んだ高い知能なのに・・・
そもそも何故賢くなりたいと切望するようになったのでしょうか
「利口になりたい!」異常なモティベーションは母親の願いからだった
世間体を気にする神経質な女性
母親が闘っていたのは・・
子供が白痴という恐怖
罪悪感・恥辱
彼女にとって最も重要なのはいつも他人がどう思うかということ
彼女自身より家族よりまずは外聞なのだ
そしてそれを正しいと思うことだった
出典:『アルジャーノンに花束を』本文より
母の願い通り賢くなったチャーリイ・・最後に待ち受けた結末は!?
この物語を読んで考えさせられた事
善良なチャーリイは何故、人生を変えられてしまったのか?
友達もいて、暮らしには困っていないけれど、頭が良くなりたいと切望していた理由は、利口でない自分を否定するお母さんの存在ゆえでした
脳の手術は、何をもたらしたのか?
理解する知能が備わったために、友達と思っていた仕事仲間からもばかにされていたり、母から疎まれ捨てられたことを知るという悪いことも起きてしまいます💦
尊敬していた教授も、実はモルモット扱いをしていたという事がわかり、脳手術の成功は、逆に彼を苦しめる結果をもたらしてしまいました
母親の影響力の強大さ
教授たちの知能を追い越す程、頭が良くなっても、幼少期のチャーリイは常に彼を見張っています
母を怒らせるような振る舞いをしようとすると、身体に異変が起こってしまうなど、日常生活は、なかなか順調にはいかないのです💦
彼を理解してくれた父より、否定した母親の影響は大きく、
精神的に、母親から自立することの大変さがわかります
知能・知識を高めても、報われないこともある
彼らが僕を変えた。僕に手術をして僕を違うものに変えた。 あんたがいつもそうしたがっていたように
母親に愛されたい一心で頑張ってきたことなのに・・・。チャーリイは哀しみながら、意を決して会いにいった母親に言葉をぶつけます。
子供が母親が望む通りになっても、思う結果が手に入らない事があるのを知る痛みは、大人になるもどかしさと似ていますね
真の自立は難しい・・・
何が、誰が正しかったのか?
完璧に正しい人はおらず、完全に悪い人もいない
誰もが自分の行いを正しいと信じて行動しているのですが、
その歪みは弱者へ向かってしまいました
確かに母親ローズの子供への接し方は酷いのですが、それを知ったチャーリイは
「私が彼女を許さなければ、私が得るものは何もないだろう」と考えました
恨みを抱えながら生きるのは、ツラいですよね
いまだに解決されない社会問題が60年以上前の作品に集約されている
いじめ問題・家庭内暴力・母親から受ける精神的虐待・障がい者への差別・家族の問題誰もが加害者であり、被害者となる可能性を持っています
フィクションですが、実際に起こった出来事の様に感じるのは、
著者のダニエル・キイス氏が主人公と同じ特性を持つ少年の文章を参考にして、冒頭の文章スタイルを作っていったという経緯もあると思いました
「自分こそがチャーリイだと思った」世界中の読者から、著者へ多く寄せられた感想です
そして
ともに過ごしたアルジャーノンへの思いを花束に託すチャーリイ
誰もがずっと消えなかった彼の純粋な心に感動するでしょう。最後の場面に涙が止まりません。
また時間を置いて、読み直したい本です
にほんブログ村